<番外編> 宝山寺というお寺
目の前に、私が「ご利益のテーマパーク」と読んでいる「信貴山・宝山寺」がある。
山のお寺で高低差が激しいため、入所2日目の、まだ食事ができて体力がある間にお
参りした。

このお寺、古来大阪のお商売人さんをターゲットに発展してきたお寺で、境内の寄
付をした方々の氏名を記した石柱に「金・壱億円」などと、景気のいい金額が並ぶ。

数多くのお堂があり、「商売繁盛」「家内安全」「無病息災」「交通安全」・・・そ
の他もろもろにご利益があるものとされており、いわゆる「現世利益」のお寺であ
る。多くのお堂を前に、いきおい参拝者はあっちこっちでお賽銭を投げることになる
わけである。


奥の院に至るアプローチにはお地蔵様が並び、その前にも一つひとつお賽銭皿が置か
れている。几帳面な参拝者は1円玉をたくさん持ってきて、上り下りの際に一つづつ
お賽銭を入れていく。(ちなみに、1円玉の両替もこのお寺では受け付けてくれる。)

宝山寺の参道にはかつて「生駒新地」と言われる遊郭街があった。こういったところ
も、ナニワの商売人向けビジネスモデルで街全体が出来ていたのが分かる。
しかし、お地蔵さんに挟まれたアプローチを抜けて奥の院に至ると、開山堂には中興
開山湛海律師の姿が安置された開山堂、さらに、宝山寺全体を見下ろす岸壁に設置さ
れた「般若窟」 ~ これは、その昔修行者がこの窟内に般若経を納め、また、弘法
大師も修行されたと伝わる霊窟があったりする。当初は厳しい修行の場であった事が
感じられる。本尊が仏の道を厳しい態度で導く不動明王というのもイメージにぴった
りだ。

尋常では考えられない厳しい修行を重ねた律師の祈祷の有難さにあやかろうと、ナニ
ワのあきんど達が現世利益を求めて参拝した、というのが現在の宝山寺を形作ったプ
ロセスの様だ。
<岩谷の滝>
奥の院からの下り道をちょっとそれたところに「岩谷の滝」という滝がある。


こちらは「般若の滝」とは違い、「岩谷の滝 大聖院」という立派な礼拝対象だ。ここ
にも不動明王像が置かれている。やはりここも、マイナスイオンたっぷりの山の中の
霊場だ。


宝山寺の奥の院、岩谷の滝でお賽銭を投げ、「この断食が有意義なものになります様
に」と祈り、帰途についた。
