大河内 敦の裏blog(番外編)

広告会社に勤める一級建築士の断食経験とその後。

熟成肉をいただく。

にわか収入があった。で、熟成肉を食べに行くことにした。このblogのテーマからは外れるが、貴重な経験だったので記録しておこうと思う。

ことの始まりは、ワインスクールが縁お友達になった、心斎橋で100年続くすき焼き屋さんの若社長がベタ褒めしていた長居の熟成肉のお店に興味を持ったことだった。老舗のすき焼屋のご主人がおいしいという肉なら、さぞかし美味しいことだろう、と、ネットで調べてみると結構なお値段である。しばらく躊躇していたのだが、廻りに聞いてみると知ってる人もいたりして、熟成肉では有名なお店の様だ。

11月限定のシャトーブリアンの食べ比べコースというのがあり、基本、コースは2名からの予約なのだが、これについては1名でも予約可能とのこと。あまり一人で行くのに混んだ時間に行くのは気が引けるので、開店時間の17時半に予約を入れた。当日、会社を早引けして、にわか雨が降って生暖かい夕方の街に飛び出す。

開店ちょっと前にお店に到着。テーブルの準備ができるまで、エントランスで待たせてもらう。ガラス張りの冷蔵庫に熟成中のお肉の塊が並ぶ。新しいものはまだお肉の色をしているが、時間がたったものは灰色に変色している。冷蔵ショーケースには、テイクアウト用のハンバーグやローストビーフがレトルトパックされたものが置かれている。

店主は本も出されている様だ。

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テーブルに案内してもらう。オープンキッチンに向かった三人掛けのカウンターを独り占めさせてくれた。ニューヨークテイストのアートっぽいインテリア。

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最初にスパークリングワインをグラスで頼み、前菜が出るまでの間に出された香川県産のオリーブとともにいただく。

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このガラスの器、中が空洞になっていて、好きなものを挿し込んでデコレーションできる。ちなみにこの日はオリーブの葉があしらわれていた。仕入れた時に一緒に箱に入っていたらしい。

最初にシェフが今日使うお肉をみせてくれる。

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食べ比べるのは繁殖の役割を終えた「経産牛」と、若い「処女牛」の二種類。赤身主体のお肉だ。

このお肉を使っての、メインディッシュの調理が始まる。カットされた熟成肉は更に周辺の灰色になった部分が切り取られ角ペールに捨てられる。肉は、あっという間に半分ぐらいの大きさになる。少し勿体無いな気がしたが、カビが生えたりしていて食べられたものでないらしい。ただ、コンソメの出汁を取るにはいい材料になるとのこと。 

目の前の炭火でシェフがお肉を焼いてくれる。

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通常の焼肉なんかと違って、脂が滴らないので煙はほとんど出ない。ジュージューといった音もあまりしない。ただ静かに、プルプルと柔らかそうに揺れる分厚い肉の塊が、遠火の炭火でやさしく加熱されていく。しばらく丁寧に裏表が焼かれたと思うと、火から離され、アルミホイルで包まれて、肉はしばらく放置される。 

その間、最初に生肉の前菜。

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熟成させてないフレッシュなお肉のユッケと、熟成肉のお刺身。塩とわさびでいただく。昨今ユッケは食べる機会がなくなってしまったが、こちらのお店では、保健所の指導に従った調理法を行うことで許可をもらい、生肉を提供しているとのこと。 

次に肉と一緒に焼かれた松茸が入ったコンソメスープが出された。

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松茸は土瓶蒸しくらいでしか、あまり食べた経験がない。もちろんコンソメとのマリアージュは初めて。最初にお箸で具の松茸だけをいただき、最後にスープを飲む。 ~ 松茸とコンソメ、素晴らしい相性だ。コンソメの旨味に松茸の香りがベストマッチ、奥行きのある味わいになる。 

しばらくすると、シェフがまた戻ってきて、アルミホイルからお肉を出して、また焼き、また包んで放置する。都合これを三回繰り返し、最後にいい焼き色が付いたシャトーブリアンは、トリュフと焼きトマトを添えられて、メインディシュになる。

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お肉が柔らかく旨味がたっぷり。そして甘い。飛び切り新鮮なお刺身や、しっかり育てられた野菜もそうだが、チャンとした食材というのは「甘い」。あと、酒粕の様な発酵臭がして、しっかりとした旨味に力強さを添える。二種類のお肉の食べ比べた印象としては、「処女牛」の方は当然柔らかく、旨味もさわやかでヌケがいい。一方「経産牛」の方も年を取っているとはいえ十分に柔らかい。味わいは「処女牛」と比べると旨味が複雑だ。どちらも十分美味しいが、どちらかというと「経産牛」の方が好みかな。

お肉だけで酔っ払いそうな気分になる。それほど、しっかりした味わいのあるお肉。そのしっかりしたお肉に、スペインのしっかりした重たいワインを合わせていたただく。

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で、しっかりしたお肉にお酒も進み、結局ボトルを一人で一本空けてしまった。あまりお酒は強くないのだけれど。

〆の一口カレーとスウィーツをいただき、店を出る。

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酔いがまわってまっすぐ歩けない。でも、しんどいわけではない。

一軒で物足りなくなってもう一軒飲みなおし行きたくなったり、〆のラーメン食べたくなったりといった事もない。それだけ充実した食事だったということだ。まっすぐ家に帰り幸せな気分で九時半に寝てしまった。