大河内 敦の裏blog(番外編)

広告会社に勤める一級建築士の断食経験とその後。

静養院 20年ぶりの再訪。

療養所は予約時に半金入金したら、あとは入所日に残金持って行き、そのまま療養開始、と言う段取りでいいのだが、せっかくなので事前に訪問してイメージづくりがしたくなった。

ゴールデンウィーク前の4/21日の日曜日、静養院に入所費用の残りの半金持って訪ねることに。20年ぶりに再訪である。断食療養所・静養院には、近鉄生駒駅からケーブルカーに乗ってひと駅、宝山寺駅で降り、そこから徒歩10分ちょっとの距離だ。

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宝山寺駅ホームの階段。20年前の断食中、このたった二十数段のゆるい階段を息切れして心臓バクバクとなり、イッキの上まで登れなかったことを思い出した。

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駅から十数分で静養院の門の着く。ここからゆるいアプローチを上ると到着。

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約束の午後1時に到着した。ちなみに、断食「道場」ではなく「療養所」なのである。

風立ちぬ」に出てきた療養所も、こんなカンジだったのかな。とにかく周りを緑で囲まれ、山の中腹なので眺めも日当たりもいいところに、創立100年超の断食療養所・静養院はある。

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院長の寺井さんと面会。 ~ 今飲んでる薬への断食中の対応や、持ち込んで良いもの・悪いもの、あるいは日用品で持ち込み必要なもの、不必要なもの、などを確認。(ちなみに洗濯機は自由に使っていいが、洗剤は自分で持ってくること。お風呂に備え付けのボディソープやシャンプーは自由に使ってよろしい。タオル・バスタオル・パジャマなどは自分で持ってくること。など)

なお、私が入る予定の角部屋は台風のダメージから修復工事中で、いいお部屋なので入所に間に合えばそこを使ってもらおうと思っている、間に合わなければ別の部屋を考える、とのこと。断食中は気が滅入りがちなので、新しい明るいお部屋というのは精神的には救いになるだろう。 

院長さんとしばらく雑談したが、

・リピーターで来る人がほとんどで、新規の入所者が少なくなっていること。

・新規で相談に来られる方は、最近の「ファスティング」と呼ばれるダイエット色の強いもののイメージで来られる方が多い。うちの断食は心身のリセットや療養が目的で、逆にダイエットならうちの様な長期間の断食ではなく、短期間の断食を繰り返すというプログラムでないと、身体が冬眠状態になり代謝が落ちるので効率的ではない。

いろいろお話していて、人間は食欲をはじめとした「欲」に縛られていて、一見、「自由」とはこの「自分の欲望を叶えること」と考えがちだが、一方「欲」から解き放たれる「自由」と言うのもある訳で、この逆説が断食の目指すところなのかな、という気がし始めた。まあ断食しながら、いろいろ考えてみよう。

と、言うわけで、院長とお話しているとだんだん入所が楽しみになってきた。有意義な休暇にしよう。

 

20年前に断食したときは・・・

1999年、ノストラダムスの年は私が30代最後の年。有難いことに仕事では貴重な体験となる大規模なプロジェクトに参画でき、充実感いっぱい。でも疲労感もいっぱい。

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休日出勤も溜まっていたので、仕事が一段落したところで40歳の誕生日を前に休暇をもらい、この時、件の断食療養所・静養院に二週間のプログラムで入所したのが、私の断食初体験である。今では「ファスティング」という言葉も出来て、断食に興味を持つ人はカジュアルにいるが、当時はかなり珍しがられた。

最初の三日間で食べる量を徐々に減らしていき、水だけの断食がまる五日間、以後六日間で徐々に食べる量を増やして行く、というプログラムだった。 

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( ↑ 写真は、20年前の断食体験記ノート。)

 

五日間の断食中で、印象に残っているのは、   

 ① ひどい偏頭痛になったこと。

 ② 階段を十数段上ると、息が切れ心臓がバクバクして座り込んだ。暇つぶしに持っ

   て行ったギターを弾こうとしても握力が低下してしまって押弦できなかった。

   ~ ことごと左様に体力が低下し、身体に力が入らなくなったこと。

 ③ 難しい事が考えられなくなったこと。(暇つぶしに赤川次郎のミステリー小説など

   を読んでもストーリーが頭の中で整理できず、ついて行けない。)

 ④ 動くと息が切れる & 難しいことは考えられない。よって、基本的に何も出来ない

   ので、ものすごく退屈だったこと。(じっとしてると何かしたくはなるのだが、何

   かしようとしたり、考えようとしたりしても「出来ない」。)

 ⑤ 会社から療養所に電話があったりすると、ものすごくイライラした応対になった

   こと。(お腹が空くとイライラするののひどい状態になった。ちなみに皆こういっ

   た状況に陥る様で、電話機の前に「落ち着いて喋りましょう」の張り紙が貼って

   あった。)

 ⑥ 大きいのも小さいのも、臭くなる。断食が進むと、大きいのは当然出なくなるが

   小さい方はどんどん色が濃くなっていく。悪いものが身体から出て行っている印

   象を持ったこと。

 ⑦ 断食中は体重はもちろん減るが逆に体脂肪率は増え続けたこと。回復食開始後に

   体脂肪率が逆に減り続け、入所当初の数値になってもそれ以上減り続けたこと。

 ⑧ 回復食はさぞや感動的・・・かと思いきや、意外と感慨が無かったこと。

 ⑨ 療養所の方に「どうでしたか」と訊かれ「しんどかった。」と答えたら「5日間

   くらいの断食が一番しんどい。それを超えると逆に楽になってくる。」と言われ

   たこと。

 ⑩ 断食プログラム終了日には意外と体重は減ってなかったが、帰宅してからの一か

   月間どんどん体重が下がり続けたこと。(そもそも胃が小さくなったからか、梅干

   し・みそ汁・ご飯一膳くらいでお腹がいっぱいになる。お酒も少し飲むと、もの

   すごく回ってクラクラするのでこれも一か月くらい飲むのをよした。)

 ⑪ 結局、「悟りの天使」は、下りてこなかったこと。

 

今回は、4週間の入所で、減食3日、断食12~14日間(!)、回復食13~11日間、前回と比べてかなりハードである。どうなるか??

そもそも、断食に興味を持つに至ったことの成り行きは。

最初に断食に興味を持ったのは、バブル期だった。

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~ 当時私は30歳前後で仕事も一通り覚え独り立ちもし、しかもまだ若い。会社から見れば一番便利使いしたくなる年ごろだったところに、バブルの大波がやって来た。ルーティンでこなしていた仕事にこの時期特有の "スペシャル・金余り・予算消化プロジェクト" がオンされ、やってもやっても仕事が終わらず、慢性的な寝不足。一つひとつの仕事が丁寧に出来ない事からくる自己嫌悪、時間をかけてじっくり考えることが出来ず最終形のイメージが描けない事から、プロジェクト推進に迷いが生まれ、手が止まり、仕事が滞り溜まっていく。得意や営業からの催促の電話に常に追いまくられ、若いなりに持っていた自分の仕事に対する自信は、圧倒的な仕事量の前にあっけなく打ち砕かれた。能力不足とメンタルの弱さを感じ、精神的にも肉体的にもつらい思いをした時代だった。良くバブルの時代はよかった、楽しかった、という事を言う人がいるが、私はあの時代に戻るくらいなら仕事を半分にしてもらって、そのかわり給料も半分でいいと、迷いなく断言できる。

どんどん考え方がネガティブになっていき、夜中に心配事で目が覚めて眠れなくなる。満員電車に乗ってると、走行中に突然ドアが開いて車外に放り出される想像をしたりする。そんなことはあり得ないのは分かっているのだが、日々仕事で心配事だらけの頭の中に、悲観的な考え方をする回路がガチッと出来上がってしまっているカンジ・・・多分、今なら「うつ病」の診断が下る様な状況だったと思う。

何とか、この状況に対する自分のスタンスや考え方をキッチリ持って気持ちを整理しない事には、神経をすり減らして衰弱していく・・・と思っていた時に、ヨガの専門家・藤本憲幸さんがが書いた「自分革命の整理学」と言う本に出会う。この本には著者が断食によりいろいろなものを整理し、真に重要なものを見つけ、解脱していくプロセスが描かれていた。 

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曰く「ふつうの人は『できることをやらないで、できないことを望む』のです。」 ~ また、著者が断食体験をしたときに「体が軽い、頭が冴える。、気力が充満している。食べていないのになぜだろう。」さらに、「と、その瞬間、私の頭のてっぺんに穴があき、そこから青空が見えました。自分はこの宇宙と完全に一体になった。」・・・ 今読むとにわかには信じられない内容なのだが、当時はこれを読んで心底うらやましく感じたし、何の疑いもなく自分も断食すればそういう心境に簡単に到達できると思った。 ~ 若かったし、それだけ追い詰められていたということだろう。

その後、バブルも終わり部署も異動になり、落ち着いて仕事が出来る環境が出来たので、仕事を丁寧にこなすことで充実感を感じられる日々が続く。私も精神的に追い詰められた状態から自信を取り戻し、断食のことはすっかり忘れていた。が、1996年に東京から関西に転勤、最初に住んだのが奈良県生駒市あたり。緑豊かな山上をドライブしていたある日、件の著者が断食したという療養施設を偶然発見する。

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~ もちろん、精神的にはもう立ち直っていたのだが、断食に対する興味がムクムクと湧き始めた。

還暦・定年を前に、断食することを思い立つ。

2019年5月末、私は定年を迎える。 ~ 還暦を迎える新年が明けた1月、その日を前に何かケジメをつけたくなり、いろいろリセットする意味で断食をすることを考え始めた。

有給休暇はかなり余っており、かと言ってあまり積極的に消化するつもりも無かったのだが、もし、長期休暇 = 施設に入り断食するとして、わたしの誕生日が5月28日、7日×4週間=28日ということで、5月1日からちょうど4週間の断食プログラムが組める。かつ今年のゴールデンウィークはまさかの10連休。新元号「令和」初日の5/1~スタート、16日間の有給休暇をとれば(ちなみに、これでも半分も消化できていない。)ちょうど60才の誕生日に断食終了出来る計算になる。

実は20年前に一度、40才になる直前に5日間の完全断食を経験している。当時は断食することで「天使が下りてきて」悟りが開けることを期待したりしていた。しかし、実際はフィジカルな意味ではダイエットに劇的な効果があったものの、精神的にはつらい空腹の思い出しかなく、なんとなく中途半端に終わったという気分だけが残っていた。こんな長期のお休みは定年前ぐらいしか取れないので、再トライするにはいい機会かなと考えると、俄然やる気が出てきた。

でも、施設が空いてない事には始まらないので、20年前にお世話になった奈良県生駒山上にある断食療養所「静養院」に連絡を取ったところ、まだ空きがある模様。一方、定年前というのは退職金や企業年金の受取り、保険証の切り替え、財形や社員持ち株会に加入していればその解約や退会・・・などなど、何かと会社での手続きがありそうなので、人事に「退職直前に4週間も会社休んだら手続き的に何か問題があるか」と問い合わせたところ、昨今の「働き方改革」の風潮からか、「予定を早めに決めて言ってもらえれば、手続きのスケジュールは調整できるので全然問題ない。むしろ、どんどん休むことを推奨します。」みたいなニュアンス。

取り急ぎ、静養院に半金振り込んで入所の予約、あとは無事休める様、周囲との調整を開始することにした。

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