大河内 敦の裏blog(番外編)

広告会社に勤める一級建築士の断食経験とその後。

5月5日(日)  ー 本断食3日目

前回の断食をしたときにきつくなり始めた3日目。昨晩就寝前の巡回で、「頭が痛いのと、飲んだ水がのど元まで逆流しているカンジがするのだが。」と相談した。頭が痛いのは、低血糖になって、ブドウ糖を消費する脳が糖不足のアラームを出しているから。また、水が逆流するのは、胃が空っぽになり本来の位置や大きさに戻ってきている一方、今まで通りの量で胃酸が分泌されているから。両方とも断食にはつきものの症状なのだが、頭痛は辛い。「水を取る様に。逆流が気になるなら、少しずつこまめに。」との指導をもらう。おかげで今朝は前回と比べると驚くほど楽だ。

頭もすっきりしているので、昨日の院長先生からのお話を私なりに再解釈したことをノートして置く。

                  ●

・グラブで縦軸に「疲れ、体力の量」

     横軸に「断食の経過日数」

     ここに、赤線:体力 青線:疲れ をプロットする。

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・体力が疲れを上回る状態は、模式的にこのように表される。

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・逆に、疲れが体力を上回っている時。

 このギャップをカバーしているのが「気力」である。

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・断食療養所入所初期は、この気力を使う対象がなくなり、疲れが顕在化する。だから

 眠くなる。その一方で、食べないから体力は低下していく。

 両方が穏やかに低下していく。

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・断食終了後に回復食のフェーズに入ると、体力は回復していく一方て、疲れは取れた

 ままなので、爆発的に気力が充実する。

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今朝起きた時に、このグラフが頭に浮かんだ。つらくて何も考えられなかった前回では考えられないことだ。このまま穏やかに断食が進めばいいな。明日はどうかな。

5月4日(土)  ー 本断食2日目

あまりにも眠い。初日の夜は9時前に就寝、2日目も8時すぎ、それ以外にも日中に本を読んでいても眠気が襲ってくる。前回はむしろ、睡眠時間が短くなったように感じたので、院長さんに質問したところ、

 

・眠いのは疲れが取れていくプロセス。

・多分3日目くらいが一番キツくて、それから楽になっていくが、これは疲れが取れだ

 から。

 但し体力はむしろ減退しているので、このタイミングで疲れが取れたからと言って何

 かするとひどくこたえるはず。

・復食が始まると、重湯を飲んでも元気になる。但し、体力は回復していない。ここで

 調子に乗るのは厳禁。

・体力回復のめやすは、お通じが始まったところ。排泄する体力が戻った証拠なので。 

と、すると、断食療法とは、体力を意図的に低下させることで疲れを顕在化させ、休息することで疲れを取り去ったうえで体力を回復させるプロセスと言えるか。

引き続き、院長に質問してみた。 

・正しいが、もう一つ抜けているのが「気力」

・人間は「体力」と「疲れ」のバランスを取りながら生きているが、実際にその折り合

 いをつけてるのが(○○しなければいけない、○○するぞっ!と言った)「気力」。

・ここにきて、最初に眠くなるのは何もすることがないので、「気力のタガ」が外れて

 純粋に疲れが出てくるため。

・疲れが出て、なおかつ、気力の必要もないとなると、眠気が襲い休むことになる。そ

 こに食べないものだから、体力も低下する。基本的に何もしない、できない状態に自

 分を追い込み身体も脳も休ませることが「断食」。

 

・要約すると、最初の数日、眠くなる。その後、疲れが取れるので少しやる気が湧いて

 くるが体力は低下しているので、何かするとまた疲れる。何もできなくなる。この状

 況を受け入れて、食的にも身体的にも精神的にも何もせずに休息を与えることが断食

 の要諦。 (つまり、何も食べずに、何もせずに、何も考えずに、ぼ~っとしてなさ

 いと。)

 

・前にも書いた通り、回復食が始まるとありがちなのが、急にやる気が起こってきて、

 外に出歩いたりすること。しかし、回復食初期の食事は基礎代謝に必要なカロリー数

 すら満たしてないので、別のところでカロリーを浪費すると身体に入った食物を消化

 する方に廻せず、結果消化~代謝に悪影響が出て、身体がむくんだりする。気を付け

 なければならない。静養院が回復食の期間を長くとっているのそういう理由から。

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                   ●

午前10時すぎ、本を読んでいると、また、眠くなって寝てしまった。14時前に目を覚ますと少し頭痛がする。水を飲むと、少し逆流している様な気がする。 ~ 前回の断食では3日目がキツかった。いよいよ明日がその日である。

5月3日(金)  ー 本断食初日

昨日も夜8時すぎに寝てしまった。2日連続の早寝である。かと言って普段の様に夜中に目が覚めて困ると言う事もあまり無くて、朝7時に起床。fitbitの計測によると、9時間12分の睡眠時間。わたしは普段睡眠時間が短く、一週間連続で毎晩4時間程度というのは普通にあり、均してもたぶん平均5時間半を切ってると思うので、これは結構大きい変化だ。

体の方は、まだ初日なのであまりしんどくは無い。昼過ぎに散歩がてら「般若の滝」まで行く。ここについてはまた詳しく説明するが、昔、療養者が滝行を行っていたりしたた場所。「療養が無事終わり、成果が出るよう」祈願。

                  ●

・静養院の建物の構成について。

創立100年超の断食療養所・静養院の建物は、「玄関」「本部」集会室を兼ねた「娯楽室」「浴室」「宿泊室(公式名称は『病室』)」などが入ったの逆T字型の本館があり、更にその奥と手前を二つの宿泊棟(別館・特別室)がはさむ構成になっている。

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写真で見るように、逆T字型の建物の長辺が南西に向けて大きく拡がり、かつ、大変緑豊かな環境である。

この療養所は自然に囲まれ、また、生駒山のほぼ頂上近くにあるため、眺望がすばらしい。時は、一年で一番木々や草花が生命力をあふれさせる5月。毎年誕生日が近くなると「自分はなんといい季節に生れたものよ。」と思うものだが、今年は格別だ。

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長い廊下沿いに個室が並ぶ。

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私はその中でも東端の1号室、角部屋で東からは朝日が、南から日照が、さらに眼下に生駒の街が見下ろせる位置にある。食べ物を断つというのは、やってみると想像以上に辛いもので、気持ちが滅入りがちになる。そんな中で宿泊する部屋が明るいというのは、何にも替えがたいありがたい環境だ。がんばって行ってみようと思う。

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5月2日(木)  ー 2日目

静養院の一日の流れは、

 ・消灯 21時~6時

   (但し、共用部分の電気が消えるだけで、部屋の電気はついてて可)

 ・朝7時半、全館に邦楽「春の海」が流れ、

   その後、娯楽室にて「朝礼拝」がある。

 ・断食前後の食事は、

   朝食 8時 昼食 12時 夕食 16時 である。

 ・夕方18時に、また、「夕礼拝」

 

基本的には以上の様になっているが、しんどければ部屋でじっとしていても可だし、朝夕礼拝も希望者だけが参加。もちろん元気があれば、許可をもらって外に出かけても構わない。

入所中の入浴は、体に負担をかけない様に2日に一回のシャワーだけ。大体20分程度で済まさなければならない。断食中はめまいを起こすことがあるし、今のように入所者が23名もいると、1時間÷20分=3人として、8時間近くかかることになるのだ。

礼拝では、般若心経の読経がある。もともと療養者の精神修養で始まったものだが、現在では宗教的な意味あいのものではなく、漫然と時間が流れる療養所での朝夕の時間のけじめを意識させる役割と、普段より深い呼吸をするための訓練である。般若心経を声を出して読経した方は分かると思うが、(ぎゃーてー、ぎゃーてー、はーらーぎゃーてー、はらそーぎゃーてー、と言う風に、)早口で読むと非常に息継ぎがしにくいお経で、結果、普段より身体から沢山の息を吐き出すことになる。自由参加だが、私は折角なので参加することにしている。 

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朝10時ごろから、館内放送で断食の効能についての小話が約30分~1時間放送される。これを聴いてるだけで結構断食の理論的バックボーンに詳しくなれる。 (これは現在院長多忙のため、お休み中)

減食中、回復食中の方の食事は各部屋に配られ、入所者は朝・昼・夕と各自の部屋で食事を取る。集合して食べると、各人の食事の量が違ってひもじい方の食欲を刺激するからだろうか。

夕方また、娯楽室で般若心経の夕礼拝がある。 ~ オフィシャルなプログラムは、以上だ。あとは、長い自由時間があるだけ。最初のうちは元気なので外に出歩いたりもするが、前述したように断食が本格化すると、その元気もなくなる。ただ、何もしない、何も考えない時間が過ぎていく日々が続く。

明日から本断食。 最後の晩餐は重湯と梅干だ。 

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ちなみに、静養院では地下から井戸水を汲み上げて、ウォータークーラーで入所者に提供している。

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 ~ もちろん、塩素消毒していないので、ペットボトルなどに入れて、口をつけて飲むと、すぐ飲み口に雑菌が繁殖して臭くなる。生駒山の地下水だけにミネラル分も多いらしく、「静養水」の名前で通信販売されていたりもする。

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この新鮮な井戸水だけを飲んで、明日から10日間、調子が許せばそれ以上の期間過ごすことになるわけだ。

令和元年5月1日 ー 入所当日。

51日令和元年初日、いよいよ入所の日である。天気は朝から雨が降ったりやんだり。でも、冷涼な空気と雨に濡れた瑞々しい若葉が新元号スタートの静謐な空気を作っている様に感じる。今年の4月は気温が低く、例年ゴールデンウィークに我が家では庭にサクランボが熟すのだが今年はまだ青いままだ。~ 今度帰ってた来た時はもう実は落ちているだろう。 

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昨日知り合いに一斉にメールやラインで「約一カ月連絡が取れなくなる。近況が気になる方はこのブログを見て。」と案内し終えた。会社やカミさんにも、入所中連絡が取りたい場合は電話すること。メールは見れない状況になる、と、伝えてある。

お昼過ぎに自宅を出発。カミさんが駅まで送ってくれた。重い荷物をもって生駒に向かう。

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夕飯が16時からなので、入所は15時までだ。30分前に到着。さすが、ゴールデンウィーク、入所者が多いようで玄関の土間に靴がずらりと並んでいる。

 

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台風で傷んだ部屋の復旧工事は完了しており、生駒市内を見下ろせる南東向きの角部屋に案内してもらえた。標高340m、断食中は気が滅入りがちになるので、新しく、明るい、日当たりも風通しも良い部屋というのは、ありがたい。長期の療養になるので、いい部屋にしてもらえたのかな。なお、院長さんは自分で部屋や建物の修理をしている様だ。台風の後の屋根瓦も自分で葺いたとのこと。

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院長さんから、今後の予定についてのお話がある。先ず断食は10日行い、それ以降は様子を見ながら延ばせるようならのばす。明日一日は準備日として徐々に食事の量を少なくし、早速明後日から本断食に入る、とのこと。~準備日は三日くらいとるものと思っていたので、ちょっとあわてた気分になる。でも、後半に時間を取っておくほうが、頑張って日数を延ばしても、後の回復期間がしっかりとれるので、いいことかと思う。がんばろう。

16時に夕飯、すでにお粥である。

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18時に娯楽室に希望者だけ集まって、院長先導の元、般若心経を3回、「正座の辞」を復唱、その後一、二分正座をする。これについては、また改めて、わたしの感じたところを書かせてもらいますが、先に言っておくと、ここは宗教とは無縁な施設です。 

あと、持ってきた荷物の整理やWi-fiの設定をしていると、なんか気が抜けたのか、夜8時くらいには眠くなり、9時前に寝てしまった。

静養院入所前にしたこと。

「定年前」「4週間の断食療養所入所」~ 自分の中でもこの意味づけがだんだん重く

なっていき、いやが上にも気持ちが高ぶる。別に今生の別れ、というわけでも無いのだ

が入所前に急にいろんな人と会いたくなった。

 

・まず、行きつけのワインショップ・居酒屋・焼肉屋などなどに行き、「断食するので

 二カ月くらい来れなくなるから。」と挨拶して廻る。みなさま、この突然の宣言に興

 味深々。

・静養院を再訪したあと、そのままワインスクールのクラスメイトとのワイン会に参 

 加。 ~ 共通の趣味を持ちつつも、世代を超えたコミュニケーションが嬉しい。

 私よりずっとずっと若くても嗅覚や味覚に鋭い方もいて、いろいろ教えてもらえる。

 会社では年功序列的な付き合いになりがちだが、ここではフラット。利害関係もな

 い。名付けて「ワインの前の平等」「ワイン民主主義」。

ゴールデンウィーク前の勤務最終日、会社で仲良くしてもらっているToshiさん

 と呑んで帰る。次に一緒に呑めるのは早くて二か月後だ。

・故郷・和歌山市に里帰り。実家の母親と行かず後家の妹に会いに行く。ちょうどオヤ

 ジの月命日のお参りとも重なり、お寺の坊さんとも話ができた。

・それに絡めて、現地で中学時代の友達とプチ同窓会 ~ これは、ゴールデンウィー

 クで里帰りしてきているメンバーもいて、ありがたく楽しい時間が過ごせた。女子一

 同から還暦のお祝いに立派なお箸をもらう。二次会のカラオケで欅坂の「黒い羊」に

 初挑戦する。難しい!  次までに練習しておこう。

・そのまま紀伊半島を南に下り、昔世話になっていたお料理屋のお母さんが病気療養中

 なので、お見舞いに。

・そして、阪神間に戻ってきて、今度はカミさんを連れて何年振りかの二人だけでの外

 食。連れて行ったお店は最近ワインスクールの先生にご紹介いただいたところで、

 勉強熱心な若いシェフと知的なソムリエさんが二人でやっている、ワインとお料理の

 マリア―ジュ、知的な会話が楽しめる。垢抜けたインテリアでこじんまりした大変居

 心地のいいお店。大変気に入っている。これから二ヶ月は来れなくなるのが「惜し

 い!」。

 

・入所前日・平成最後の日4月30日、今度は国家公務員の一次試験が終わったばかりの

 息子も交え家族三人で「最後の晩餐」。ボリュームありめのサンドイッチに、ジャガ

 イモのスープを作る。そして、この日のために取っておいた秘蔵のスパークリング・

 ワイン。冷蔵庫から出して時間が経って、少しぬるめになると桃や花の香りがしてく

 る。 春~初夏にピッタリだ。

 息子とカミさんに「汝、このサンドイッチを食べ給え。これは余の身体なり。

 このスパークリングワインを飲みたまえ。赤くないが、余の血となり」と言いながら

 楽しく酔っぱらった。

            ~ これらをガガガッと、4月下旬の10日ほどで行った。

定年関連の手続きが始まる。

サラリーマンは、定年が近づくといろいろ手続きがある。

定年直前の四週間「断食休暇」をとる旨、事前に会社に説明してあったので、人事局の担当が少し早めに、じっくりと時間をかけて、それも二人掛りで、丁寧に手続きや諸注意事項についての説明をしてくれた。

年金手帳や雇用保険証の受取り、退職金の受取り手続き、私は60歳以降も再雇用で同じ会社で働くのだが、高齢者雇用継続給付 (収入がガクンと減るためハローワークに申請するとその補填が出たりする) の支給申請、などなど。書類には「高齢者雇用・・・」と言った言葉が躍り、本人の意識とは別に自分が「社会保障」と「納税の義務」の間のある枠組みの中に組み込まれていっているのがヒシヒシと感じられる。

60歳以降も、仕事へのスタンスは変えずに今まで通りにやって行こう、というか、管理職の立場を解かれる分むしろ若い人たちに交じって再び現場仕事に取り組もうぐらいに考えているものの、周囲のこういった状況、特に再雇用で収入がガクンと減ることについては、やはり自分の考え方や生活ぶりを見直す必要がある。少なくともシニアの再雇用に於いては独身社員でもない限り、思いっきり働いて思いっきり遊んで、という若い時の様なスタイルは無さそうだ。~ これも静養院での有り余る時間の中で考えてみようと思う。

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